
2024年11月に開催された「LINE BIZ Conference 2024」で、「LINEミニアプリ」の大幅アップデートが発表され、新たに「未認証ミニアプリ」が提供開始されました。
今後LINEミニアプリは、これまで通りリリースに事前審査を必要とする「認証済ミニアプリ」と審査不要で素早くリリースできる「未認証ミニアプリ」に細分化されます。
今回は、未認証ミニアプリと認証済ミニアプリの違いや、未認証ミニアプリの登場によって解決できる課題、具体的なリリースまでの流れを解説します。
そもそもLINEミニアプリとは?
LINEミニアプリは、LINEアプリ上にデジタル会員証・モバイルオーダー・順番待ち受付/呼び出し・予約など店舗や施設などで活用できる自社サービスを展開できるウェブアプリです。
自社独自のスマホアプリを開発することなく、多くのユーザーが日常的に使用するLINEアプリ上で自社オリジナルの便利なサービスを提供できるので、開発コストを抑えつつ顧客体験の向上が実現できます。
また、ミニアプリ経由でLINE公式アカウントへの友だち追加を自然に促すことができるので、ミニアプリを利用した顧客にメッセージを配信するなど、LINE上で継続的なコミュニケーション接点を持てることからも注目が集まっています。
未認証ミニアプリとは?
「未認証ミニアプリ」は、LINEヤフー社による審査を通過していないLINEミニアプリのことを指します。
これまでLINEミニアプリを公開するには、LINEヤフー社による審査に通過する必要がありましたが、2024年11月28日のアップデートにより、LINEミニアプリチャネル※を開発した時点で、未認証ミニアプリとして審査不要でLINEミニアプリを公開できるようになりました。
※注釈:LINEミニアプリチャネルとは、アプリとLINEプラットフォームを接続するための通信路です。LINEミニアプリのサービス提供者は、LINEミニアプリの開発時にLINE DevelopersコンソールでLINEミニアプリのチャネルを作成します。
なお、LINEヤフー社による審査は今後も行われ、審査に通過したLINEミニアプリは認証済ミニアプリになります。
認証済ミニアプリと未認証ミニアプリの違いは?
審査不要でLINEミニアプリを公開できる未認証ミニアプリですが、一部機能に制限があり、認証済ミニアプリにならないと利用できない機能があります。
認証済ミニアプリと未認証ミニアプリの機能の違いは以下の通りです。
カテゴリ | 機能 | 認証済ミニアプリ | 未認証ミニアプリ |
---|---|---|---|
ブランディング | 認証バッジ | ○ | × |
指定URL設定(Custom Path) | ○ | × | |
通知 | メッセージの有償通知(Messaging API) | ○ | ○ |
メッセージの無償通知(サービスメッセージ) | ○ | × | |
アクセス導線 | オーガニック流入(LINEアプリ内検索) | ○ | × |
リテンション流入(LINEアプリ内履歴表示) | ○ | × | |
ホーム画面流入(ショートカット作成) | ○ | × | |
LINEマイカード掲載 | ○ | × | |
CRM | LINE公式アカウント 友だち追加オプション | ○ | △ ※詳細はこちら |
アシスト機能 | 共通プロフィール情報のクイック入力 | ○ | × |
LINE未使用ユーザーのWebブラウザ誘導 | ○ | ○ | |
審査 | リリース審査 | 有 | × |
特にポイントとなる違いは以下の通りです。
サービスメッセージの利用可否
未認証ミニアプリでは、LINEミニアプリ独自の通知機能である「サービスメッセージ」が利用できません。
サービスメッセージを使うと、予約完了通知や呼び出しリマインド通知など、LINEミニアプリ内のユーザーアクションに対する非広告性の通知を「LINEミニアプリ お知らせトークルーム※」に無料で送信できるようになります。(但し、ユーザーのアクションに対して5件までのメッセージ送信可の制限あり※詳しくはこちら)
※LINEミニアプリを提供する企業が利用できる共通のトークルーム。

未認証ミニアプリの場合はこのサービスメッセージを利用できないため、LINEミニアプリを利用したユーザーに通知を行う際はMessaging APIを利用してメッセージを配信する必要があり、これは月額の課金対象となり有料です。
LINEアプリ内のアクセス導線の有無
未認証ミニアプリの場合、LINEアプリ内検索やLINEのホームタブの利用履歴表示からの誘導など、LINEアプリ内のアクセス導線がありません。
認証済ミニアプリに関しては、LINEアプリ内の検索や利用履歴からの流入はもちろん、今後はYahoo!検索からのアクセス導線強化も予定されています。
(参考:https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/016575)
LINEアプリやYahoo!検索と連動したサービス誘導を強化したい場合は、認証済ミニアプリにしておくメリットが大きいです。
友だち追加のチェックをデフォルトでオンにできるかどうか
LINEミニアプリでは、ユーザーがLINEミニアプリを初めて開いた時に、チャネル同意画面にLINE公式アカウントを友だち追加するオプション(友だち追加オプション)を表示するように設定できます。
LINEミニアプリを利用すると同時に自然にLINE公式アカウントの友だち追加ができ、継続的な接点を得られるメリットがあります。
この友だち追加オプションは、認証済みミニアプリでも未認証ミニアプリでも利用可能です。
ただし、友だち追加するオプションをデフォルトでオンに設定するには認証プロバイダーになる必要があります。LINEミニアプリの審査に通過するとミニアプリチャネルのプロバイダーは認証プロバイダーになります。

共通プロフィール情報のクイック入力が使用できるか
LINEアプリでは、ユーザーがLINEアカウントとYahoo! JAPAN IDを連携している場合、LINEやYahoo! JAPANに登録しているメールアドレスや住所などのプロフィール情報を組み合わせて作る「共通プロフィール」を設定できます。
(参考:共通プロフィールを設定してクイック入力を利用する|LINEみんなの使い方ガイド)
認証済ミニアプリではこの共通プロフィールを活用して、ミニアプリ利用時に必要となるメールアドレスや住所などの情報を自動で入力させる機能(クイック入力)を利用可能です。
会員登録や購入手続きの際に必要なユーザー情報の入力の手間が減り、入力ミスの防止効果も期待できるため、ユーザー体験を高めながらコンバージョン率の向上が期待できます。
クイック入力を利用できるのは認証済みミニアプリのみで、なおかつ特定の法人ユーザーのみに限定されています。利用の際は、LINEヤフー社から案内を受けた法人ユーザーが、クイック入力の利用申請を行う必要があります。

LINEミニアプリに今後追加予定の拡張機能は認証済ミニアプリで利用可能
LINEミニアプリでは今後、上述した通りLINE・Yahoo!検索でのアクセス導線強化のほか、アプリ内課金やLINEミニアプリ内での広告掲載・レベニューシェアなどの各種拡張機能を順次追加していく予定です。
これらの拡張機能は認証済ミニアプリで利用可能で、未認証ミニアプリでは利用できません。
今後のアップデート含め、LINEミニアプリをより有効活用できる様々な拡張機能を使えるという点が認証済ミニアプリの大きなメリットと言えます。
▼参考:「LINE」上で自社サービスを提供できるアプリプラットフォーム 「LINEミニアプリ」を大幅アップデート|LINEヤフー株式会社
未認証ミニアプリにはどんなメリットがある?
いくつか機能的な制限があるものの、未認証ミニアプリを公開できるメリットは、複雑な運用開始フローがなくなり気軽にミニアプリを試すことができる、という点です。
審査が不要で、スピーディにミニアプリをリリースできる
LINEヤフー社によるミニアプリの審査は、終了するまでに1~2週間程度かかります。審査のためには資料を用意する必要もあります。
却下された場合、再申請と再審査にはさらに数日かかり、審査の完了日は事前に指定することはできません。
まずはスピード重視でサービスとして形にしたミニアプリを公開し、すぐに運用を開始したい場合の手段ができたのは一つのメリットです。
必要な機能のみからスタートでき、ミニアプリを段階的に導入できる
まずは未認証ミニアプリとして運用をスモールスタートしたあと、実際のミニアプリの利用状況を検証した上で、効果的であれば認証済ミニアプリに移行して機能を強化し本格的に提供していく、という段階的な導入が可能です。
審査がネックとなりLIFFを活用していた場合でもミニアプリを試しやすくなる
LIFF(LINE Front-end Framework)とは、LINEヤフー社独自のフロントエンドフレームワークで、LINEミニアプリはLIFF上で実行されるウェブアプリ(つまりLIFFアプリ)の一種です。
LIFFはLINEミニアプリと異なり審査が不要で、LINEアプリ内で動作するWebアプリを開発・公開できるため、審査のスケジュールや手続きがネックとなる場合にミニアプリではなくLIFFが活用されるケースもありました。
今回、未認証ミニアプリが提供開始されたことで、従来LIFFを活用していた広告主・開発パートナーにとってミニアプリを活用しやすくなったと言えます。
LIFFと未認証ミニアプリには、機能的に大きな違いはほとんどありません。
参考:LIFFとLINEミニアプリはブランドを統合予定
2025年2月12日にはLINE Developersより、今後LIFFとLINEミニアプリはブランド統合を予定しており、LIFFアプリを新規作成する際は、LINEミニアプリとして作成することを推奨するという発表がありました。
▼参考:LIFFアプリを新規作成する際は、LINEミニアプリとして作成することを推奨します
統合後は、LIFFアプリで実現できた機能の実装や新機能の追加などをLINEミニアプリとして行う予定としています。
以上のことから、今後LINEのアプリ内で動作するWebアプリを開発したい場合は、基本的にLINEミニアプリとして作成することが一般的になると考えられます。
▼参考:ニュース:LINEログインとLIFFのロードマップを更新しました | LINE Developers
未認証LINEミニアプリのリリースの流れ
認証済みミニアプリでも未認証ミニアプリでも、開発・検証までのプロセスは同じです。
未認証ミニアプリの場合は、LINEミニアプリチャネルを開設した時点で、審査不要で公開可能な状態になります。
ミニアプリの開発・検証のプロセス完了後、審査に通過すると認証済ミニアプリとしてリリースできます。
LINE Developersコンソールでサービス提供に必要な情報を入力し、審査を申請して審査に通過すると、認証済ミニアプリとして公開可能になります。

まとめ
未認証ミニアプリが登場したことで、今まで以上に様々な企業がLINEミニアプリの活用に取り組みやすい環境ができてきました。
複雑な運用開始フローがなくなり気軽にミニアプリを試すことができるので、まずは未認証ミニアプリをうまく活用しながら効果検証をしていくのもアリですね!
LINEミニアプリとしてはLIFFとブランドを統合し、認証済ミニアプリを対象にさらに機能が追加される予定ですので、LINE活用施策のひとつとして今後も注目しておきたいところです。