多店舗展開をしている小売店や商業施設、サロン、飲食店や、複数のブランドを展開する企業においてLINE公式アカウントの活用を検討する際、
「全店舗・ブランド共通のアカウント1つで運用するべきか」
「店舗・ブランドごとにアカウントを分けて運用するべきか」
という点に悩むケースは少なくありません。
本記事では、共通アカウントと複数アカウントそれぞれのメリット・デメリットを整理しながら、適切なアカウントの運用方法をユースケースを交えながら解説します。
複数店舗・ブランドを持つ企業のLINE公式アカウント運用方法
複数の店舗でLINE公式アカウントを活用する方法は主に3つあります。
- 店舗共通のアカウントを1つ作る
- 店舗ごとにアカウントを複数作る
- 店舗共通のアカウントと店舗ごとのアカウントをそれぞれ併用する
どの方法がベストかは、LINE公式アカウント運用の目的や実施したい施策によって異なります。
今回は、それぞれの方法のメリット・デメリットを解説しながら、どのような目的・ケースで採用されるケースが多いかをご紹介します。
店舗・ブランド共通のアカウントを1つ作る
共通のLINE公式アカウントを作成し、各店舗・ブランドで共用し運用する方法です。
アカウント開設やツール導入費用、開発範囲、運用体制を最小限に抑えつつ、インパクトの大きいLINE施策を試したい場合に適しています。
また、ブランドやコンテンツの一貫性や、店舗を横断した顧客データの統合管理による全体最適を重視したい場合にも選択されることが多い方法です。
メリット:店舗・ブランド横断でデータを一元管理でき、運用コストを抑えられる
店舗横断で友だちや顧客のデータを一元管理でき、管理・運用のコストが低い点がメリットです。
特に、LINE公式アカウント上で会員証やポイント管理、予約管理などの会員機能を提供する場合はメリットが大きいです。
アカウントが一つにまとまっていれば、こうした会員機能を共通化し、開発工数やメンテナンスコストを最小限に抑えることができるためです。
また、運用を本部のみに集約できるため、各店舗・ブランド側の運用リソースが不要になり、運用コストを抑えやすいです。
本部管轄で運用することで、ブランドイメージやコンテンツの質の面で一貫性を保ちやすいという点もメリットです。
デメリット:店舗・ブランド別のメッセージ出し分けが難しく、月額費用が高額になるケースも
一元管理ができる反面、店舗・ブランドごとに適切な情報やサービスを出し分けるには、アカウントを運用する本部と各店舗・ブランド間とで連携するための体制や仕組みの工夫が必要です。
- 店舗・ブランドや地域ごとに異なる商品・サービスを展開している
- 店舗ごとの在庫状況や当日の天候、地域イベントと連動したタイムセールなど即時性が重要となる告知を行いたい
- 特定の店舗での予約確認・変更をLINE上で行いたい
など、店舗・ブランドごとにメッセージ配信の内容やタイミングを最適化したい場合や、店舗主体で顧客とコミュニケーションを取ることでスムーズなユーザー体験を重視する場合は、アカウントを店舗ごとに分けて運用した方が適切となるケースもあります。
また、費用の面では1つのアカウントにまとめる分、友だち数が多くなりやすいので、LINE公式アカウントの月額費用がかさむ可能性があります。
例えば、店舗共通のアカウントで友だち数3万人いた場合、月4回配信すると277,000円かかります。
A店舗、B店舗、C店舗それぞれ友だちが1万人いて、各店舗のアカウントの友だち数の合計が3万人だった場合、月4回配信すると135,000円で済むので、大きな差になります。
店舗・ブランドごとにアカウントを複数作る
1つの店舗・ブランドに1アカウントずつ用意し、本部ではなく店舗・ブランド主体で運用していく方法です。
店舗・ブランド主体でプロモーションを企画・実行する体制がある場合や、店舗や地域ごとに最適化されたコミュニケーションを重視したい場合に選択されることが多いです。
また、全体的にかかるLINE公式アカウントの月額費用を抑えやすいのも特徴です。
メリット:LINE公式アカウントの数や友だち数によっては月額費用を抑えやすく、店舗・ブランドごとに配信内容を最適化できる
店舗・ブランドごとにアカウントを作成した場合、アカウントの数だけ無料のメッセージ配信通数を確保できるので、上述の図1の通り、全体で見たときにLINE公式アカウントを複数に分けた方が月額費用を安く抑えられるケースもあります。
飲食店の場合は「LINEで予約」とセットでLINE公式アカウントを利用することで、月額18,000円で10万通まで無料でメッセージを配信できる特別プランもあります。
また、1つの店舗・ブランドにつき1アカウント用意した場合、店舗・ブランドごとに最適なメッセージやリッチメニューの配信ができ、パフォーマンスの分析もしやすく改善に取り組みやすいです。
店舗・ブランドごとに異なるキャンペーンや、在庫状況に応じたタイムセールの告知など、店舗・ブランドの状況に応じてタイムリーな告知をフットワーク軽く行えるメリットもあります。
デメリット:横断的なマーケティング施策は行いにくく、店舗・ブランド側に運用リソースが必要
顧客データが店舗ごとに分断されるため、横断的なマーケティング施策や分析が難しくなります。
友だち追加(集客)施策も店舗別に行う必要があるので、店舗・ブランドごとの目標管理や汎用的な集客施策の展開などの工夫が必要です。
コンテンツの質や運用方針にもバラツキが生じたり、店舗スタッフの運用コストがかさみミスが起こったりする可能性が高くなります。運用ルールの策定や社内体制含めて十分に検討していく必要があります。
共通のアカウントと店舗・ブランドごとのアカウントをそれぞれ併用する
共通アカウントを持ちつつ、店舗・ブランドごとにもアカウントを用意しそれぞれ併用して運用する方法です。
大規模な多店舗展開を行っており、店舗・ブランドごとの運用体制が整っている場合に選択肢に挙がる方法です。
- 会員証やポイント機能、予約変更などの会員サービスを一つのアカウントに集約して実装しつつ、店舗ごとに最適化した配信を行いたい
- 予算を十分に確保できている
というケースでは検討してみると良いでしょう。
メリット:横断的なマーケティング施策を行いながら、店舗・ブランドごとに最適化されたコミュニケーションを実現
本部(ブランド全体)として店舗・ブランド共通かつ大規模なプロモーションを実施しながら、店舗・ブランドごとのアカウントからは個別のお知らせやキャンペーンをお知らせができます。
会員証やポイント通知など、全店舗・ブランド共通の会員機能は共通アカウント側のみ実装すれば提供可能で、開発工数を抑えやすいです。
店舗・ブランドごとに配信を最適化しつつ、データの管理・分析を横断的に行えるので、目的に応じて柔軟な運用が可能な方法です。
デメリット:月額費用と運用のコストが高く、各アカウントの位置付けや設計が複雑になりやすい
共通アカウントと店舗・ブランドごとのアカウントを両方用意するため、ユーザーには二つのLINE公式アカウントそれぞれを友だち追加していただく必要があります。
ユーザーが迷うことのないよう、それぞれのLINE公式アカウントの役割や提供している機能を明確にしつつ友だち追加を促す必要があります。
また、2つのLINE公式アカウントからそれぞれメッセージ配信を行うため、配信数や配信対象によってはLINE公式アカウント全体の費用がかさむ場合があります。
複数店舗・ブランドのLINE公式アカウントを一元管理する「グループ」機能
複数のLINE公式アカウントを運用するケースで、各店舗・ブランド側での運用リソースの確保が難しい場合や施策を本部に集約したい場合、LINE公式アカウントの標準機能「グループ機能」を活用するのも一つの方法です。
「グループ」機能を活用すると、同じグループに属するアカウントを一括で設定することができます。
任意の店舗・ブランドや地域に絞り、複数のLINE公式アカウントに同じメッセージを一括で配信できるので運用工数の削減に繋がります。
リッチメニューやあいさつメッセージなど共通の設定が可能なので、提供機能やコンテンツの一貫性を保ちやすくなります。
また、グループで設定したメニューの統計情報が確認できるので、効果検証も行いやすいです。
- 実際の運用は本部に寄せつつ、店舗・地域ごとに最適な配信を行いたい
- 店舗ごとに複数アカウントを作って最適化しつつ、運用を可能な限り効率化したい
- 新たなツールの導入コストをかけず、LOAM標準機能のみで運用したい
という場合に、選択肢の一つとして検討してみると良いでしょう。
グループでは、メッセージ配信、LINE VOOM、応答メッセージ、クーポン、あいさつメッセージ、リッチメニューについて一括設定が可能です。
ただし、上記のうち一部設定に制限があるコンテンツや、メッセージ配信の絞り込みやテスト配信、クーポンの抽選設定などグループ機能では一括設定できない機能があるので注意が必要です。
▼参考
LINE公式アカウント (LINE Official Account Manager) グループマニュアル|LINEヤフー for Business
共通のアカウントで店舗・ブランド別の配信を行うには?
共通のLINE公式アカウントの場合でも、店舗・ブランド別にメッセージ配信を出し分ける方法はあります。
具体的には、以下2つの方法です。
- LINE公式アカウントの標準機能「友だち追加経路オーディエンス」を活用し絞り込み配信を行う
- 外部の拡張ツールを活用する
LINE公式アカウントの標準機能「友だち追加経路オーディエンス」を活用し絞り込み配信
LINE公式アカウントでは、標準機能として友だち追加経路の設定が可能です。
例えば、店舗やwebサイト、カタログに同梱するチラシなど、任意の異なる友だち追加経路ごとに友だち追加URL・QRコード・友だち追加ボタンを作成できます。
友だち追加経路の設定を行うと計測用のパラメーターが付与できるため、利用した店舗やブランドごとに友だち追加がどれくらいあったのか確認できると共に、追加経路ごとに「オーディエンス」が作成できます。
友だち追加経路別に作成した「オーディエンス」を絞り込み配信に利用すると、利用した店舗やブランド別にメッセージの出しわけが可能です。
ただし、この方法の注意点には以下があります。
- 友だち追加経路オーディエンスは、リッチメニューやあいさつメッセージなどの出しわけには利用できない
- 設定した経路からの友だち追加が20件に満たない場合には計測ができず、50人以上いないオーディエンスは絞り込み配信の対象にできない
- 経路を設定する以前に友だち追加した方は、別経路に含まれてしまう
- 例:ブランドAとブランドBをいずれも利用するユーザーが、先にAのLINE公式アカウントを友だち追加していた場合、ブランドAの友だち追加経路オーディエンスにのみ含まれます。その後、ブランドBの友だち追加経路から再度友だち追加してもブランドBの友だち追加経路オーディエンスには含まれないため、ブランド別の友だち追加経路オーディエンスで絞り込み配信を行っても、このユーザーはブランドBの情報は受け取れません
このような注意点が運用上ネックになる場合は、外部の拡張ツールの活用が視野に入ります。
外部の拡張ツール活用する
LINE公式アカウントの拡張ツールの中には、1つのアカウントの中で友だち追加経路ごとにセグメントを作成できるものもあります。
このセグメントを活用し、友だち追加した=利用している店舗・ブランドや地域・拠点ごとにメッセージの出しわけはもちろん、リッチメニューやあいさつメッセージを出しわける機能も提供されています。
LINE公式アカウントのオーディエンスではできない、経路ごとの友だち数が20件に満たない場合の分析や、50人に満たないセグメントでもメッセージ等の出しわけが可能なため、小規模な施策からでも試しやすいです。
LINE公式アカウントは1つにまとまっているので、運用リソースは本部のみに集約させつつ友だちや顧客のデータは横断的に一元管理でき、店舗ごとの最適化や分析も両立可能である点が特徴でありメリットです。
ただし、外部ツールを新たに利用するための費用は必要となります。
初期導入のコストと中長期的な費用対効果、どちらをどれくらい重視するかを踏まえながら検討すると良いでしょう。
まとめ
今回は、複数店舗・ブランドを持つ企業のLINE公式アカウント方法として、「共通アカウントで運用する方法」と「店舗・ブランドごとに複数アカウントで運用する方法」のメリット・デメリットを整理しながらご紹介しました。
それぞれの方法で懸念となりやすい「運用リソース」「配信内容の最適化」「データの一元管理」という部分に関しては、本記事後半でご紹介したLINE公式アカウントの標準機能「グループ機能」や「友だち追加経路オーディエンス」の活用を始め、外部の拡張ツールをうまく取り入れることで解決できる課題もあります。
ぜひ、自社のLINE公式アカウントで重視したいポイントを踏まえて、適切な運用方法を検討してみてください。