お客様の声を起点にした “改善実行力のあるチームと仕組み” はどう作る?HEAVEN JapanのShopify活用術に迫る

記事メイン画像:お客様の声を起点にした “改善実行力のあるチームと仕組み” はどう作る?HEAVEN JapanのShopify活用術に迫る

「下着でこんなに変わるんだ!」という驚きと感動を届けるHEAVEN Japan(ヘブンジャパン)。それぞれのキレイを叶える「適正下着®」をコンセプトに商品の開発・販売を行う上で、スタッフ一人ひとりがお客様の声やデータと向き合いながら、日々顧客体験を磨き続けています。

そんなHEAVEN Japanが自らのD2C事業で実際に活用し、成果を上げてきた顧客エンゲージメント施策をベースに開発された“現場主導のリアルDXパッケージ”「つなデジ」の一環として、本インタビューをお届けします。

ShopifyやLINEなどを駆使し、「お客様の声から施策アイデアを出し、すぐ試し、成果を実感できる仕組みをどう構築しているのか?」「顧客体験を向上させるために、どんなアプリをどう活用し、何を指標としているのか?」など、体験価値を高めたい事業者様の参考になるお話が盛りだくさんです。

◆インタビュイーのご紹介

  • 株式会社HEAVEN Japan 取締役 執行役員 今川 浩志 様
  • 株式会社HEAVEN Japan マーケティングコミュニケーション部 横田様、原田様
  • 株式会社HEAVEN Japan DX部 山地様、平田様、奥田様

ブランドにとって “課題は宝” 顧客体験も従業員体験も大切にするHEAVEN Japanの接客哲学

ー まずはHEAVEN Japanについて教えてください。

HEAVEN Japanは、「快適な着け心地」「バストの形を整える機能」「服を着たときの立体感」にこだわり、それぞれの悩みや理想、ライフスタイルに合わせて選んでいただける「適正下着®」をコンセプトに商品の開発・販売しています。下着やからだのことで悩んだり諦めたりする女性をなくすために、HEAVEN Japanはブランド活動を行なっています。

HEAVEN Japan 公式オンラインショップ 画像
HEAVEN Japan 公式オンラインショップより

ー 2023年6月にCRM PLUS on LINEを導入いただいてからもうすぐ2年が経ちますが、HEAVEN Japanはお客様の声を聞き、反映するスピードがとても早いと感じています。CRM施策を改善していく中で、重視していることを教えてください。

適正下着®で感動を届けるためにメンバー全員が共通認識として大切にしているポイントは、「お客様のお悩み事は何か?商品にどのような要素を求めるのか?を深く理解し、商品や接客に反映することが重要である」ということです。

お客様を深く理解するには、「直接声を聞くこと」と「データをもとに行動を推測すること」の両方が欠かせません。

「直接声を聞くこと」の具体例としては、HEAVEN Japanが運営する「試着体感サロン」という実店舗やポップアップショップで伺うのが一番ですが、SNS投稿やGoogleマップのレビュー、購入後のアンケートなどでもお客様の声を伺えるよう工夫しています。

ー レビューやアンケートの依頼はどのように行っていますか?

お客様にとって自然なタイミングで、なるべく手間をかけない方法でお伺いできるよう心がけています。

たとえば、試着体感サロンに来店いただいた当日の20時頃にGoogleマップのレビュー投稿依頼をお送りしたり、オンラインストアでのサンクスページ(購入完了ページ)でアンケートをお願いしたりしています。

HEAVEN Japan:レビュー投稿依頼LINEと、サンクスページでのアンケートのイメージ
HEAVEN Japan:レビュー投稿依頼LINEと、サンクスページでのアンケートのイメージ

Googleマップのレビュー投稿依頼は、メールだけでなくLINEでもお送りすることで、レビュー投稿数が約6倍以上に増加しました。詳細な実施方法は後述しますが、ワークフローの自動化アプリ「Shopify Flow」と、オムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」、LINE連携アプリ「CRM PLUS on LINE」などを活用して実現しています。

オンラインストアのサンクスページ(購入完了ページ)でのアンケートは全10問でお願いしています。「アンケート回答でクーポンプレゼント」などの施策は実施していないにも関わらず、回答開始率は約60%、最後まで回答いただける方は約40%と、多くのお客様にご協力いただいています。

ー レビューやアンケートのお願いは、早すぎず遅すぎず、ちょうど良いタイミングでお願いするのが重要ですね。

顧客理解を深める方法として、「直接お客様の声を聞くこと」の他に「データをもとに行動を推測すること」も挙げられていました。具体的には、どのような方法で実践されているのでしょうか?

店舗・オンラインストア・LPなどの数字を見ながら、なぜご購入いただけたのか・なぜご購入に至らなかったのかをチームで一緒に話し合いながら考えています。オムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」を活用することで店舗・ECのデータを横断的に分析できる仕組みをつくれていますし、Shopify自体の分析機能もどんどんアップデートされているので頼もしいですね!

HEAVEN Japanでは“課題は宝”と捉え、お客様の声やデータから課題を見つけたら、それをスピーディーに改善につなげていく姿勢を大切にしています。

写真:株式会社HEAVEN Japan DX部・マーケティングコミュニケーション部の皆様
株式会社HEAVEN Japan DX部・マーケティングコミュニケーション部の皆様

ー お客様の声を聞き、データを分析し、改善する……大事であることは分かりつつ、実践に必要なノウハウやリソースの確保に苦労されている企業も多い印象です。

利用しているカートシステムやデータベースの構造などによっても、実施難易度は変わりますしね。Shopifyはコマースプラットフォームとしてかなり自由度が高いですが、できることもアップデートも多い分、(支援企業に頼りきりにならず)事業者自身がキャッチアップして実際に自分で手を動かせるかどうかが重要です。

昨今特にアパレル業界では、海外の格安ECの台頭などもあり、「自社が選ばれる理由」に今までより一層向き合う必要が生まれてきている、様々な企業と話していて感じます。

弊社も以前は広告・モールでの販管費に頼った施策の比重が高かった時期もありますが、それだけでは利益を創出してブランドを存続させることが難しくなってきている状況の中、「従業員全員が原価まで見て、数字を自分事として捉えられるようになり、主体的に改善アイデアを出せるようになること」を目指して仕組みをつくってきました。

ー 現場のスタッフまで含め、全員が原価まで把握を……?

はい、全員です。家計簿やダイエットと同じで、まずは現状を正しく分析できていないと本質的な改善はできないという考えから、全員がShopifyの管理画面上でデータを確認できる仕組みを整えました。

ただし、売上だけを重視して、無理な販売につながってしまうような接客は、HEAVEN Japanの目指す姿ではありません。

売上と顧客満足度を両立させるためには、店舗スタッフの評価軸と評価方法も重要です。評価軸が売上だけだと、結局現場のスタッフは無理な販売をせざるを得なくなってしまいますから。また、店舗スタッフのリソースにも限界はあるので、自動化できるところは自動化していくのも重要ですね。

そこでHEAVEN Japanでは、スタッフごとの販売実績と顧客対応満足度をどちらも適切に評価するために「Omni Hub」を活用してデータ統合を行ったり、「こうしたらお客様に喜んでいただけるのでは」と思いついても実行リソースが足りないものを、Shopifyアプリを駆使して自動化したりといった取り組みを行ってきました。

ー お客様の体験はもちろん、店舗スタッフの体験まで考慮した設計になっているのですね。

従業員体験(EX:Employee Experience)を良くすることで、自発的な改善サイクルがまわり、さらに顧客体験(CX:Customer Experience)が良くなっていくという関係が理想だと考えています。

お客様の声を聞き、思いついたアイデアを実行し、数字が改善され、お客様からも嬉しい声が届くというサイクルを回しやすい環境を用意していくのが重要です。

写真:株式会社HEAVEN Japan 取締役 執行役員 今川 浩志 様
株式会社HEAVEN Japan 取締役 執行役員 今川 浩志 様

ー ここまで読んだ皆さん、きっと具体的な施策例について知りたくなってきたのではないでしょうか。次章で詳しく伺おうと思います!

“お客様の声から施策アイデアを出し、すぐ試し、成果を実感できる”仕組みをShopifyで実現

ー HEAVEN Japanで実行している「課題の発見〜施策の実行〜分析」のサイクルについて、いくつか具体例を教えてください。

直近取り組んだ施策として、下記2つを一例としてご紹介しますね。

  1. 口コミ・レビューが大事な商品だからこそ、Googleマップのレビュー依頼や紹介施策を強化し、平均購入金額がUP
  2. 損した気持ちにさせない!誕生日ポイントの失効前リマインドLINEで、月末の購入顧客数が約1.5倍に
図解:HEAVEN Japanの取り組み例

口コミ・レビューが大事な商品だからこそ、Googleマップのレビュー依頼や紹介施策を強化し、平均購入金額がUP

商品やサービスを選ぶときに何を重視するかは人それぞれではありますが、HEAVEN Japanのお客様にアンケートを取った結果、SNSや友人・家族の口コミ、レビューサイトなどを参考にしている方が多いことが分かりました。

グラフ:商品やサービスを選ぶ時の決め手のアンケート結果
引用元:【Shopify Flow】レビュー依頼はタイミングが大事!ShopifyFlowを使ったMEO施策1年間の成果

ちなみにこちらのアンケートは、Shopifyアプリ「Asklayer」を活用して実施しています。

ー 確かに下着を買うときは口コミが気になりますね。実際に試着できるのが一番ですが、毎回試着してから買うわけでもないですし……。趣味の合う知人からおすすめしてもらったものは安心して買いやすいのも分かります。

そこで、HEAVEN Japanで取り組んだのが下記の2施策です。

  1. Googleマップのレビュー依頼をLINEでも配信
  2. 紹介プログラム「スマイルリレー」の開始

まずGoogleマップのレビュー依頼については、試着体感サロンでお買い物をしていただいた方に、LINEでレビュー投稿のお願いを配信するものです。

画像:HEAVEN Japan LINE公式アカウント 来店・購入後レビュー依頼のイメージ
HEAVEN Japan LINE公式アカウント:来店・購入後レビュー依頼のイメージ

LINEでのレビュー依頼を開始して1年2ヶ月で、試着体感サロンのレビュー数は6倍以上に増加しました。

Googleマップ レビュー数の増加
  • 心斎橋店
    2023年11月:48件 → 2025年1月:121件(増加率622%)
  • 東京青山店
    2023年11月:30件 → 2025年1月:101件(増加率841%)

※増加率は、「試着体感サロンオープンから2023年10月まで」のレビュー数と、「2023年11月から2025年1月まで」のレビュー数を元に算出。

ー 配信はどのようにして実現していますか?

ワークフローの自動化アプリ「Shopify Flow」と、オムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」、LINE連携アプリ「CRM PLUS on LINE」などを活用して実現しています。

試着体感サロンでのお買い物をトリガーに、来店当日の夜8時にレビュー投稿依頼のLINEを配信するワークフローを作成しました。下記のようなイメージです。

画像:Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフローの設定概要
  • トリガー: Order created(注文が作成された)
  • 条件: 店舗(試着体感サロン・ポップアップショップ)での購入かどうかなどを判定
  • アクション: CRM PLUS on LINEでLINEメッセージを配信

このように、FlowとFlowに対応している( Flow上で使えるトリガーやアクションを提供している )アプリを活用することで、柔軟にワークフローを実装できるのもShopifyの魅力ですね。

ー 先ほど言及された紹介プログラム「スマイルリレー」も、Flowと他アプリを駆使して実現されている施策ですよね。かなり壮大なワークフローで、「これを事業者さんが組めるのすごいな!」と驚いた思い出があります。

Flowは、事業者側のアイデアを形にするための最高のツールです!実現したいアイデアが現場から生まれた時に「Flowでどうにかできないか」と考えて検証していくと、大体のことが実現できてしまいます。スマイルリレー施策もその一例ですね。

スマイルリレーはお客様同士の紹介の仕組みで、紹介した方と紹介された方それぞれが一定の条件を満たしたらポイントをプレゼントする施策です。

画像:HEAVEN Japan スマイルリレープログラム紹介ページ
HEAVEN Japan スマイルリレープログラム紹介ページより

ポイント付与の仕組みから、紹介した方・された方へのメッセージ配信まで、2つのワークフローで実行しています。

まず1つ目のワークフローでは、紹介した方・紹介された方それぞれにポイントを付与し、紹介した方にはお礼メッセージを、紹介された方にはWelcomeメッセージを配信しています。

画像:Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフローの設定概要
  • トリガー:Customer has been referred(VIP-会員プログラムが提供しているトリガー)
  • 条件:諸々
  • アクション:LINEでFlexメッセージを送る(CRM PLUS on LINEが提供しているアクション)

そして2つ目のワークフローでは、スマイルリレーで紹介された方が4000円以上購入いただいた場合に、追加でポイントを付与し、LINEでお礼メッセージを配信しています。

画像:Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフロー設定概要
  • トリガー:Order created(Shopify純正のトリガー)
  • 条件:諸々
  • アクション:LINEでFlexメッセージを送る(CRM PLUS on LINEが提供しているアクション)

ー こうして実施したスマイルリレー施策、結果はいかがでしたか?

3ヶ月で230人ものお客様がスマイルリレー経由で新規会員登録してくださっただけでなく、スマイルリレーで紹介されたお客様の購入金額は、当ショップ平均の1.25倍という結果になりました(2025年2月の実績値より算出)。

信頼している友人の紹介だからこそ安心してお買い物いただけるという輪が広がっていることを嬉しく思いますし、HEAVEN Japanが「親しい友人に自信を持っておすすめできる」ブランドであり続けたいと改めて感じる結果でした。

ー レビューや口コミ、紹介をきっかけに商品を検討することが多いという実際の声からスタートした施策だからこそ、こうした成果につながっているのでしょうね。

誕生日ポイントの失効前リマインドLINEで、月末の購入顧客数が約1.5倍に

ー お客様の声から生まれた施策例として、ポイントの失効前リマインドも実施されていると伺いました。こちらはどのような課題からスタートしたのでしょうか?

お客様から「ポイントの失効に気づかなかった」というお問合せを頂いたのがきっかけです。調べてみたところ、ご利用いただけないまま失効してしまったポイントは約270万ポイントにものぼっていました。

特に「お誕生日ポイント」は多くのお客様に付与されていますが、有効期限が限られているため、忘れられてしまうことも多い状況でした。お得にお買い物していただくためのポイントなのに、知らぬ間に期限が切れてしまっているとがっかり感に繋がってしまいます。

そこで、お誕生日ポイントの失効7日前にLINEでリマインド通知を配信するようにしてみました。ワークフローの作成には「Shopify Flow」を、ポイントの管理には「VIP – 会員プログラム」を、LINE配信には「CRM PLUS on LINE」を活用しています。

画像:Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフロー作成イメージ
Flowでのワークフロー設定概要
  • トリガー:Point will be expired(VIP-会員プログラムが提供しているトリガー)
  • 条件:なし
  • アクション:LINEでTextメッセージを送る(CRM PLUS on LINEが提供しているアクション) とステータス管理

ー 誕生日の前後は色々なクーポンやポイントが届きがちなので、うっかり忘れてしまうのを防げる仕組みは助かりそうですね……!実施してみて、反響はいかがでしたか?

誕⽣⽇ポイントの有効期限は誕⽣⽇翌⽉の最終⽇なので、多くのお客様に毎⽉最終⽇の7⽇前にLINE通知が送られます。そこで、「ポイント失効のLINE通知を受け取ったお客様」のうち、「ご購入があったお客様」が、毎月最終日の7日前のLINE配信の前後で、通常(月初~毎月最終日の7日前まで)と比べてどのくらい増えているかを検証しました。

2024年4月から2024年11月を対象に調査したところ、月ごとに差はあれど、平均すると約1.5倍増加しているという結果でした。

Shopifyで事業者(マーチャント)の意識改革を起こしたい

ー 最後に、HEAVEN Japanの今後の展望を聞かせてください。

洋服や靴などに比べると、まだまだ下着の重要性は低く見られがちで、お金をかける優先順位は上がりきっていないと思います。「こんなに変わるんだ!」と感動していただける商品開発とサポートには自信があるので、1人でも多くの方にHEAVEN Japanを知っていただき、感動の輪を広げていきたいですね。

また、HEAVEN Japanで実践してきたノウハウや仕組みを世に広めていくことで、Shopifyを取り巻くコマース界隈を活気づけていきたいという思いもあります。2025年4月にスタートした「つなデジ」の取り組みは、まさにその一環です。

店舗・ECの連携などは、いわゆるDXとして難しく捉えられがちですが、Shopifyと事業者が力を合わせればもっと気楽にチャレンジできる領域だと思います。これからもノウハウは惜しみなく放出していきますので、一緒に「より楽しく、感動のあるお買い物体験」を生み出し続けていきたいですね!

ーお話しいただきありがとうございました!

“現場主導のリアルDXパッケージ”「つなデジ」のご紹介

「つなデジ」とは、HEAVEN Japanが自社事業で培ったShopify活用のベストプラクティスを元に、顧客エンゲージメントを向上し、事業者のDXを支援するサービスです。本記事でご紹介した施策はもちろん、事業者様の状況やお悩みに合わせてサポートを提供いたします。ぜひお気軽にご相談ください!

詳細はこちら:https://tsunadigi.jp/

株式会社ソーシャルPLUS マーケティングチーム
LINE連携Shopifyアプリ「CRM PLUS on LINE」の広報・マーケティングを中心に幅広く担当。

大西 真央をフォローする
事例
タイトルとURLをコピーしました